2025年7月10日

「もう裁判は避けられない」―その一言から始まった、資格喪失を巡る弁護活動

ご相談の概要:突然告げられた「裁判」の可能性

ある日、インターネットをご覧になったという方から、切実なご相談が寄せられました。 交通事故を起こしてしまい、加害者という立場になった方でした。

最初に相談した地元の弁護士からは「交通事故の刑事事件としては、罰金で終わる略式手続きになるだろうから、特に心配はいらない」との説明を受けていたといいます。 しかし、その後、検察官から取り調べを受けた際、「これは裁判になる事案です」と、全く異なる見通しを告げられたのです。

ご依頼者は、国家資格を持ち、その資格がなければ仕事が成り立たない方でした。 刑事裁判で「禁錮」以上の刑が確定すれば、その資格を失ってしまう。 それは、ご家族を養う生活の基盤そのものが崩れ去ることを意味していました。

ご自身の起こした事故について深く反省しつつも、ご依頼者は検察官が主張する事故原因、つまり「携帯電話を操作していた」という点については、強い疑問を抱いていました。 事故のショックで記憶が曖昧な部分があり、ご自身では何が原因だったのか判然としない状況だったのです。

弁護士の対応とポイント:限られた時間の中での、証拠の再検証と検察官との交渉

初めてお話を伺った際、これは非常に難しい事案だと感じました。 ご依頼者が失うものの大きさを思うと同時に、残された時間が極めて少ないことに強い危機感を覚えました。 何もしなければ、裁判になる可能性が非常に高い。 最初の弁護士のアドバイスが異なっていれば、もっと早くから的確な対応ができたかもしれない、という思いもよぎりました。

弁護活動は、時間との戦いでした。

まず、検察官に対し、こちらで証拠を精査・検討するための時間を確保したい旨を具体的に説明し、起訴などの処分を待ってほしいと交渉しました。 こちらが闇雲に時間を求めているのではないことを理解いただけた結果、検察官は待つことに応じてくれました。 これが、事態を好転させるための重要なターニングポイントとなりました。

次に、検察官が主張する「過失」の核心部分、つまり携帯電話の操作について、客観的な証拠を一つひとつ洗い直しました。ご依頼者の車に搭載されていたドライブレコーダーによって、事故の発生時刻は正確に特定できていました。 一方、携帯電話の通信履歴を詳細に確認すると、ご家族にメッセージを送った時間は、事故発生時刻から数分ずれていることが判明したのです。

これらの事実を基に、私は直接検察庁へ赴き、担当検察官と面会しました。 ドライブレコーダーの記録と通信履歴の間に存在する「時間のズレ」を指摘し、携帯電話の操作が事故の直接の原因とは断定できないのではないか、と私たちの見解を伝えました。 検察官は高圧的な態度を取ることなく、こちらの主張に真摯に耳を傾け、「持ち帰って検討する」と応じてくれました。

並行して、被害者の方との間では、誠意を尽くして謝罪と交渉を重ね、示談を成立させることができました。

結果:裁判を回避し、略式手続きでの解決へ

後日、検察官から「改めてご本人から話を聞きたい」と連絡がありました。 ご依頼者は再度検察庁へ出頭し、事実関係について淡々と最終の聴取を受けました。 その場で、検察官は最終的な処分を告げました。それは「略式手続きにする」というものでした。

正式な裁判が開かれることはなく、罰金刑で事件は終結しました。 これにより、ご依頼者が最も懸念していた「禁錮刑以上」の判決、そしてそれに伴う資格の喪失という最悪の事態は、無事に回避されたのです。

ご家族からは、大変感謝の言葉をいただきました。 交通事故は、誰もが意図せず加害者になり得るものです。 だからこそ、科される処分は法に則りつつも、適正なものでなければならない。 今回、その一助となれたことに、大きな意義を感じています。

本件から学ぶ、弁護士に相談する重要性

この事例は、刑事事件、特に交通事故のように誰もが当事者となり得る事案において、いかに初動の対応と客観的証拠の分析が重要であるかを示しています。そして、その過程で、専門家である弁護士が果たす役割の大きさを物語っています。

特に、捜査機関である検察庁での勤務経験を持つ元検事の弁護士に相談することには、次のような利点があります。

  • 刑事事件では、検事として捜査を経験しているため、捜査が今後どのように進むか、有利な証拠をどう集めるべきかを的確に判断できます。 また、検察官が起訴・不起訴を判断する際の基準を熟知しており、彼らの思考を読むことで、粘り強く、効果的な交渉を展開することが可能です。 本件でも、検察官が「起訴した場合に裁判で追及されると嫌な点」を先回りして指摘できたことが、良い結果に繋がりました。
  • 交通事故では、刑事事件としての側面と民事事件としての側面が絡み合います。元検事の弁護士は、刑事手続きにおいて決定的な意味を持つ「証拠の重要性」を鋭く見抜く力に長けています。 これにより、事件の的確な見通しを立て、有利な解決に向けた交渉を粘り強く進めることができるのです。

もしあなたが、あるいはあなたのご家族が、思いがけず刑事事件の当事者となってしまったら、一人で悩みを抱え込まないでください。不正確な情報や思い込みで、取り返しのつかない事態に陥る前に、どうか専門家にご相談ください。早期の相談が、あなた自身と、あなたの大切な人の未来を守ることに繋がります。

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