2025年11月6日
万引きで警察から連絡が…今後の流れと前科回避の鍵「示談」を弁護士が解説

愛媛県松山市のnac刑事法律事務所
弁 護 士 中 村 元 起
“元検察官(検事)”としての経験を活かし、起訴する側の事情や刑事事件の筋(流れ)を正確に読み取り、詳しく、かつ、分かりやすくお伝えします。また、刑事事件の経験が豊富なため、今後の展開や相手方の動向の先読みを行い、最適な解決方法のご提案が可能です。
弁護士紹介のページに、自己紹介を兼ねて経歴を記載しております。
愛媛県のみならず、全国各地から相談・依頼を承っておりますので、ご希望の方はお気軽にご連絡ください。
もし、ご自身やご家族が万引きをしてしまい、「これからどうなってしまうのだろう」と眠れない夜を過ごしているのであれば、どうか一人で抱え込まないでください。
軽い気持ちだったかもしれません。
しかし、万引きは法律上「窃盗罪」という犯罪です。
そして、その後の人生を大きく左右する「前科」がつく可能性も十分にあります。
しかし、必要以上に怖がることはありません。
万引き事件には、解決に向けた適切な手順が存在します。
そして、その解決の最大の鍵となるのが、被害店舗との「示談」です。
この記事では、万引き事件がどのように進んでいくのか、そして早期解決と前科回避のために弁護士がどのような役割を果たすのかを、不安な気持ちに寄り添いながら、分かりやすく解説します。
愛媛県における万引きの現状とリスク
まず、万引きという行為が、社会でどのように捉えられ、どのようなリスクを伴うのかを正しく理解することが大切です。
データが示す「万引き」の多さ
「万引きなんて、よくあることだろう」と思われるかもしれません。
確かに、犯罪全体の中で「窃盗」が占める割合は非常に高いのが現状です。
法務省が公表する「犯罪白書」によれば、令和5年に警察が認知した刑法犯のうち、窃盗犯が全体の約7割を占めています。
しかし、同時に知っておくべきは、万引きは非常に検挙されやすい犯罪であるという事実です。
令和5年のデータでは、店舗荒らしや住居への侵入を伴わない「非侵入窃盗」の中で、万引きの検挙率は67.3%と高い水準にあります。

これは、防犯カメラの普及や店舗側の警戒強化により、「見つからないだろう」という安易な考えが通用しなくなっていることを示しています。
ここ愛媛県においても、窃盗は県民にとって身近な犯罪であり 、特に少年による窃盗事件の中では、万引きが手口として最も高い割合を占めるという統計もあります。
これは、万引きが決して見過ごされることのない、警察が常に注視している犯罪類型であることを意味します。
万引き(窃盗罪)の刑罰と社会的影響
万引きは、刑法に定められた「窃盗罪」にあたります。その条文と法定刑は以下の通りです。
刑法第二百三十五条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
もちろん、初犯で被害額も少額な場合に、いきなり最も重い刑罰が科されることは稀です。
しかし、法律がこれほど重い刑を定めていること自体が、万引きという行為の重大さを示しています。
さらに深刻なのは、法律上の刑罰だけにとどまらない、社会生活への影響です。
逮捕・勾留されてしまえば、その期間は会社や学校に行くことはできません。
無断欠勤・欠席が続けば、解雇や退学処分につながるリスクは非常に高いと言わざるを得ません。
また、最終的に前科がついてしまうと、就職活動で不利になったり、特定の資格を取得できなくなったりと、将来にわたって大きな制約を受ける可能性があります。
ご家族が受ける精神的なショックや周囲からの目も、計り知れないものがあるでしょう。
万引き事件の捜査の流れとタイムリミミット
万引き事件が発覚した後、捜査は大きく分けて二つのパターンで進みます。
それが「身柄事件」と「在宅事件」です。
どちらのケースになるかによって、その後の流れや対応の緊急性が大きく異なります。
| 特徴 | 身柄事件(逮捕された場合) | 在宅事件(逮捕されなかった場合) |
| 身体拘束 | 警察署の留置施設等に拘束される(起訴前は最大23日間) | 拘束されず、通常の日常生活を送る |
| 捜査期間 | 法律で厳格な時間制限あり(逮捕後72時間、勾留最大20日間) | 時間制限なし。捜査が数ヶ月に及ぶことも |
| 緊急性 | 非常に高い。特に逮捕後72時間以内の対応が極めて重要 | 高い。放置すれば起訴されるリスクがあり、迅速な対応が必要 |
| 精神的負担 | 身体拘束と取調べによる急性的で強いストレス | 捜査が長期化し、「いつ呼ばれるか」という慢性的な不安 |
| 弁護活動の主目的 | 早期の身柄解放と不起訴処分の獲得 | 不起訴処分の獲得 |
身柄事件(逮捕された場合)の流れ
万引きの現場で店員や警備員に取り押さえられた場合や、後日警察が自宅に来て逮捕された場合は「身柄事件」として扱われます。
この場合、時間は法律で厳格に定められたスケジュールで、非常に速く進んでいきます。
- 逮捕後48時間以内警察は逮捕から48時間以内に、被疑者(容疑者)を取り調べ、事件の資料と共に検察官に事件を送致します(送致と呼ばれます) 。
- 送致後24時間以内(逮捕から計72時間以内)事件を送致された検察官は、24時間以内に、引き続き身柄を拘束して捜査する必要があるか(勾留請求)を判断し、必要であれば裁判官に勾留を請求します 。この逮捕から72時間が、その後の人生を左右する最初の、そして最大の重要な局面です。弁護士がこの間に活動できれば、勾留そのものを阻止し、早期の身柄解放を実現できる可能性が高まります。
- 勾留決定後(最大20日間)裁判官が勾留を認めると、原則10日間、警察署の留置場などで身柄を拘束され続けます。捜査がさらに必要だと検察官が判断すれば、さらに10日間延長されることがあり、起訴される前の身体拘束は最大で20日間に及びます 。検察官は、この期間内に被疑者を起訴するか、しないか(不起訴)を最終的に決定します。
在宅事件(逮捕されなかった場合)の流れ
万引きしたものの、その場で警察に身元などを伝えられ、逮捕はされずに帰宅を許された場合は「在宅事件」となります。
この場合、身柄事件のような厳格な時間制限はありません。しかし、捜査が終わったわけでは決してありません。
警察は捜査を進め、完了すれば事件の資料を検察庁に送ります(これを「書類送検」と呼びます)。
その後、警察や検察官から「話を聞きたいので、〇月〇日に来てください」と電話で呼び出しがあり、その都度出頭して取り調べを受けることになります。
捜査期間に法的な制限がないため、検察官の最終的な処分が決まるまで数ヶ月以上かかることも珍しくなく、その間「いつ連絡が来るのだろう」という不安な日々を過ごすことになります。
そして、在宅事件であっても、最終的に検察官が起訴(在宅起訴)を決めれば、刑事裁判を受けなければならず、前科がつく可能性があります。
余罪がある場合の対応と注意点
万引き事件で特に注意が必要なのが「余罪」の問題です。
これは、発覚した一件だけでなく、他にもやってしまった行為がないかという点です。
万引きは余罪が疑われやすい犯罪
万引きは、一度だけでなく、繰り返し行われる常習性があるケースが少なくありません。
そのため、警察は「他にもやっているはずだ」という前提で捜査(余罪捜査)を進めるのが通常です。
取り調べでは、「本当にこれだけか?」「正直に話した方が身のためだ」といった厳しい追及を受けることが予想されます。
また、店舗の防犯カメラを過去に遡って解析されたり、場合によっては自宅の家宅捜索が行われたりすることで、これまで発覚していなかった過去の万引きが明らかになることもあります。
余罪が発覚した場合の影響
もし余罪が発覚すれば、事態はより深刻になります。
余罪の件数や被害総額が大きくなればなるほど、検察官は「悪質性が高い」と判断し、起訴する可能性が格段に高まります。
また、解決の鍵となる示談交渉においても、被害店舗が複数にわたるなど、関係者が増えて手続きが複雑化します。
被害総額も大きくなるため、示談金の準備もより困難になるでしょう。

余罪についてどう対応すべきか?
取り調べで余罪について追及された際、余罪の取り扱いについては、法律の専門家でなければ極めて困難です。
この判断は、警察がどこまで証拠を掴んでいるのか、正直に話すことで示談交渉が有利に進む可能性があるのか、それとも不利な証拠を自ら与えるだけになってしまうのか、といった様々な要素を冷静に分析した上で行うべき、高度な法的判断となります。
余罪について心当たりがある方は、決して自己判断で対応せず、取り調べを受ける前に、必ず弁護士に直接ご相談ください。
具体的な状況をお伺いした上で、最善の対応方針をアドバイスします。
不起訴(前科回避)を目指す鍵は「示談」
逮捕されたか否かにかかわらず、万引き事件で前科がつくことを回避するための最も重要で効果的な活動が、被害店舗との「示談」の成立です。
示談とは?
示談とは、事件の加害者と被害者が、裁判外で話し合い、事件を解決するための合意をすることです。
万引き事件の場合、具体的には、加害者が被害店舗に対して真摯に謝罪し、盗んだ品物の代金(被害弁償)をお支払いし、多くの場合、迷惑をかけたことへのお詫びとして一定の示談金をお渡しすることで、被害店舗から「許し(宥恕)」を得る手続きを指します。
なぜ示談が不起訴につながるのか?
日本の刑事手続きでは、検察官が事件を起訴するかどうかを判断する際に、非常に広い裁量が認められています。
これを起訴便宜主義といいます。
刑事訴訟法は、検察官が起訴・不起訴を判断する基準として、以下の点を考慮するよう定めています。
刑事訴訟法第二百四十八条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
示談の成立は、この条文に書かれている「犯罪後の情況」の中で、最も重視される要素の一つです。
なぜなら、示談が成立しているということは、検察官にとって以下の二つの重要な事実を意味するからです。
- 被害が回復されていること:被害店舗が受けた金銭的な損害は、弁償によって元通りになっている。
- 被害者の処罰感情が和らいでいること:事件の当事者である被害者が、加害者を許している、あるいは厳しい処罰を望んでいない。
この二点が満たされている場合、検察官は「当事者間での問題はすでに解決しており、国がわざわざ税金を使って刑事裁判を開き、刑罰を科すまでの必要性はない」と判断しやすくなります。
その結果として下されるのが、「起訴猶予」という不起訴処分なのです。
示談による早期釈放の可能性(身柄事件の場合)
逮捕・勾留されている身柄事件の場合、示談の成立は早期の身柄解放にも直結します。
そもそも、人が勾留されるのは、「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」があると判断されるためです。
示談が成立すれば、被害者との間で事件は解決しているため、被害者を脅して証言を変えさせるといった証拠隠滅の動機は著しく低下します。
また、事件と真摯に向き合っている姿勢を示すことにもなるため、逃亡の可能性も低いと判断されやすくなります。
弁護士が、成立した示談書を検察官や裁判官に提出し、「もはや身柄拘束を続ける必要性はありません」と強く主張することで、勾留期間が満了する前に釈放される可能性が大きく高まるのです。
示談交渉は弁護士に依頼すべき理由
「示談が重要なら、自分で謝りに行けばいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、万引き事件の示談交渉は、ご本人やご家族だけで進めるのが極めて困難なのが実情です。
当事者同士での示談交渉は困難
大手スーパーやチェーン店などでは、社内ルールとして当事者との直接交渉を断られる可能性があります。
これは、対応に一貫性を持たせるためや、後のトラブルを避けるためです。
そのため、謝罪に訪れても、交渉に応じていただけないケースも少なくありません。
弁護士が代理人としてできること
弁護士は、法律の専門家という中立かつ公正な第三者として、ご本人に代わって示談交渉を行います。
- 交渉のスタートラインに立てる弁護士であれば、検察官に対して正式に被害店舗の連絡先の照会を求めることができます。検察官も、弁護士が間に入るのであれば、被害者の同意を得た上で連絡先を教えてくれることが多いです。
- 冷静かつ円滑な交渉被害店舗側も、加害者本人と直接話すことには感情的な抵抗があっても、弁護士が相手であれば、法的な手続きとして冷静に対応してくれる可能性が高まります。弁護士は適切な示談金の相場、法的に有効で、かつ検察官を納得させられる内容の示談書を作成します。
- 示談が拒否された場合の次善策万が一、店舗の方針でどうしても示談に応じてもらえない場合でも、弁護士は次善策を検討します。被害弁償金を受け取ってもらうための供託手続きや、反省の意を示すための「贖罪寄付」といった方法があります。これらの活動が、不起訴処分を獲得する上で有利な情状として考慮される可能性があります。
在宅事件でも弁護士は必要か?〜依頼するメリットと負担軽減〜
「逮捕されなかったのだから、弁護士までは必要ないのでは?」という声も聞かれます。
しかし、それは大きな誤解です。在宅事件にこそ、弁護士に依頼する大きなメリットがあります。
「逮捕されていない=安心」ではない
最も重要な点は、在宅事件でも、捜査が進めば起訴され、前科がつくリスクは身柄事件と何ら変わらないということです。
安心している間に時間が過ぎ、気づいた時には検察官が起訴を決めていた、という事態になりかねません。
不起訴処分を獲得するためには、身柄事件と同様に、迅速な示談交渉が不可欠です。

ご本人・ご家族の精神的負担を大幅に軽減
在宅事件の捜査は、数ヶ月、時にはそれ以上に長期化します。
「いつ警察から電話がかかってくるのか」「最終的に自分はどうなるのか」という終わりの見えない不安は、日常生活を送る上で非常に大きな精神的負担となります。
弁護士に依頼すれば、今後の捜査の見通しや、今何をすべきかが明確になります。
先が見えるというだけで、心の負担は大きく軽減されるはずです。
捜査機関・被害者対応の窓口代行
弁護士に依頼すると、被害店舗とのやり取りは、弁護士が窓口となって行うことができます。
警察や検察からの連絡はご本人に来ることが原則ですが、弁護士がついていれば、どのように対応すべきか、その都度アドバイスを受けることが可能です。
これにより、捜査や被害者対応のプレッシャーが軽減され、仕事や学業、家庭生活の立て直しに専念しやすくなります。
的確な取り調べ対策
在宅事件でも、警察や検察からの呼び出しに応じて取り調べを受けなければなりません。
そこで作成される供述調書は、後の処分を決定する上で極めて重要な証拠となります。
弁護士は、取り調べの前に、どのようなことが聞かれる可能性があるか、どのように受け答えをすべきか、そして、作成された調書に署名する前にどの点を確認すべきかなど、具体的かつ的確なアドバイスを行います。
これにより、意図せずご自身に不利な内容の調書が作成されるのを防ぎます。
nac刑事法律事務所の万引き事案への強み
当事務所は、刑事事件、特に万引きのような身近な事件の解決に力を入れています。
当事務所の代表弁護士である中村元起は、弁護士になる以前、検察官として勤務していました 。
検察官は、まさに事件を起訴するかしないかを最終的に判断する立場です。
その経験から、検察官がどのような証拠を重視し、どのような事情を考慮して処分を決めるのかを、肌感覚で熟知しています。
この「検察官の視点」を持った弁護活動は、不起訴処分を獲得するというゴールから逆算し、最も効果的な防御方針を立てる上で、他にはない大きな強みとなります。
当事務所は愛媛県松山市に拠点を置き、地域に密着した弁護活動を行っています 。万引き事件の解決には、被害店舗との示談交渉が不可欠ですが、店舗ごとにその対応方針は様々です。
代表弁護士は検察官として、愛媛県内の様々な万引き事案に触れてきました。
その経験を活かし、個別の事案に応じた適切な弁護活動を行います。
まとめとご相談の流れ
- まずはお電話またはウェブサイトのお問い合わせフォームからご連絡ください。
- 弁護士が直接、簡単にご状況をお伺いし、ご相談の日程を調整させていただきます。
- 事務所にお越しいただき、詳しいお話をお聞かせください。今後の見通しと、当事務所でできることを丁寧にご説明いたします。