2025年11月13日

自転車の飲酒運転で検挙されたら?2024年法改正後の罰則と不安な方へ弁護士が解説


愛媛県松山市のnac刑事法律事務所

弁 護 士 中 村 元 起

“元検察官(検事)”としての経験を活かし、起訴する側の事情や刑事事件の筋(流れ)を正確に読み取り、詳しく、かつ、分かりやすくお伝えします。また、刑事事件の経験が豊富なため、今後の展開や相手方の動向の先読みを行い、最適な解決方法のご提案が可能です。

弁護士紹介のページに、自己紹介を兼ねて経歴を記載しております。

愛媛県のみならず、全国各地から相談・依頼を承っておりますので、ご希望の方はお気軽にご連絡ください。


はじめに:自転車の飲酒運転で、今、不安を感じているあなたへ

このコラムをお読みの方は、ご自身が自転車で飲酒運転をしてしまった、あるいはご家族がそのような状況にあり、今後どうなるのか、どのような罰則があるのか、強いご不安を抱えて情報を探していらっしゃるのではないでしょうか。

「自転車だから、車と違って大丈夫だと思った」 「警察官に声をかけられ、厳しく注意された。今後、逮捕されたり、罰金を科されたりするのだろうか」

特に、2024年(令和6年)11月から道路交通法が改正され、自転車の飲酒運転に関するルールが大きく変わりました。

これまで以上に、社会の目も、法律の目も厳しくなっています。

このコラムは、あなたを不必要に怖がらせるためものではありません。

まず、法的な状況を正確に知っていただくこと、そして、もしもの場合にどのような対応策があるのかをご理解いただくことで、少しでも心の整理のお役に立てればという思いで執筆しています。

「自転車だから」は通用しません。飲酒運転を禁じる法律の根拠

まず、大前提として知っておいていただきたいことがあります。それは、道路交通法において、自転車は「軽車両」という扱いであり、自動車と同じ「車の仲間」であるということです。

そして、飲酒運転を禁止する法律は、自転車を含むすべての「車両等」の運転者に適用されます。

法律の条文を直接確認してみましょう。

道路交通法 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)

第一項 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

この条文にある「車両等」には、自動車やバイクはもちろん、自転車も含まれています。

多くの方が、「法改正で自転車の飲酒運転が禁止された」と誤解されていることがありますが、正確には異なります。

法律では、上記のように「飲酒をして自転車を運転すること」自体は、以前から明確に「禁止」されていました。

今回の法改正で大きく変わったのは、「禁止」であることに加え、これまで罰則が設けられていなかった「酒気帯び運転」についても、明確な「罰則」が整備されたという点です。

2024年11月施行。改正道路交通法で「酒気帯び運転」が罰則対象になりました

2024年11月1日、改正道路交通法が施行されました。 この改正により、これまで「今日は自転車だから大丈夫」という言い訳ができていた状況が、完全に過去のものとなりました。

具体的に、自転車の飲酒運転は「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2種類に分けられ、それぞれに重い罰則が設けられています。

1. 「酒酔い運転」の罰則(従来から対象)

「酒酔い運転」とは、呼気中のアルコール濃度(数値)とは関係なく、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」を指します。

具体的には、警察官との会話がまともに成立しない、まっすぐ歩けない、といった状態から総合的に判断されます。

この酒酔い運転は、法改正前から自転車にも適用されており、非常に重い罰則が定められています。

道路交通法 第百十七条の二

第一項

第一号 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等(…)を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。)にあつたもの

2. 「酒気帯び運転」の罰則(2024年11月~)

「酒気帯び運転」とは、身体に一定の基準値(政令で定める、呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上)以上のアルコールを保有する状態での運転を指します。

今回の法改正で新設されたのが、この「酒気帯び運転」に対する罰則です。

この状態で自転車を運転した場合、「三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」という、自動車の場合(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)と同等の非常に重い罰則が科されることとなりました。

罰則以外にも?自転車の飲酒運転がもたらす影響

「罰金を払えば終わり」と、もしお考えでしたら、それは大変な誤解かもしれません。

自転車の飲酒運転がもたらす影響は、刑事罰(懲役や罰金)だけにとどまりません。

1. 自転車運転者講習

自転車の「酒気帯び運転」は、信号無視や一時不停止などと並んで「危険行為」の一つとして指定されました。

もし、3年以内に2回以上、これらの「危険行為」を繰り返すと、都道府県の公安委員会から「自転車運転者講習」の受講が命じられます。

この講習は有料であり、もし受講命令に従わなかった場合は「5万円以下の罰金」が科されることになります。

2. 自動車運転免許への影響

「自転車の違反だから、自動車の免許には関係ない」と考えるのは、残念ながら早計かもしれません。

実際、2024年11月の法改正後、高知県で自転車の酒気帯び運転で検挙された男性が、高知県公安委員会から「6か月の自動車運転免許停止処分」を受けたという事例が報道されています。

これは、自転車の運転行為であっても、その悪質性や危険性から「その人物の運転適性」自体が問われ、自動車の免許に対しても行政処分が下される可能性があることを示しています。

3. 職場での処分

あなたが会社員や公務員である場合、刑事罰とは別に、所属する組織から「懲戒処分」を受ける可能性があります。

過去の事例では、自転車の飲酒運転が発覚した公務員が「信用失墜行為」にあたるとして、「停職2か月」や「停職3か月」といった重い処分を受けたケースが報告されています。

「今まで大丈夫だったから」という油断が、今、最も危険です

最近、当事務所のもとへも、自転車の飲酒運転に関するご相談が増加している実感があります。

これは、2024年の法改正に伴い、社会的な関心が高まったと同時に、警察による取り締まりが実際に強化されていることの表れでもあると考えられます。

これまでは、たとえ飲酒運転が発覚しても、交通事故さえ起こさなければ警察官による厳重な注意で済んでいたケースもあったかもしれません。

しかし、その感覚は、法改正を経た今、もはや通用しません。

「今日は自転車だから大丈夫」、「今まで捕まらなかったから大丈夫」といった油断や過信が、懲役刑や高額な罰金といった、思いがけない重い結果につながってしまう危険性が、かつてなく高まっているのです。

愛媛県の条例と交通ルール

当事務所が拠点を置く愛媛県でも、この法改正は大きく取り上げられています。松山市や西条市など、県内の各自治体がウェブサイトで広報を強化しており、地域全体で自転車の安全運転への意識を高めようという動きがあります。

飲酒運転は論外ですが、それ以前に、愛媛県では自転車の通行ルールについて「愛媛県道路交通法施行細則」で具体的に定められています。

愛媛県道路交通法施行細則

(※一部抜粋) 歩道を通行するときは、次の事項を守らなければなりません。

・通行指定部分がない歩道は車道よりを徐行して進行する。

・歩行者の通行を妨げることとなる場合は、一時停止する。

このように、愛媛県では自転車の安全利用に関して、法律を補足する細かいルールが定められています。

まとめ:ひとりで悩まず、当事務所にご相談ください

自転車の飲酒運転は、2024年の法改正を経て、もはや「少しぐらい」では済まされない、重大な犯罪行為となりました。

しかし、今、ご自身が直面している状況がどれほど不安なものであっても、決して一人で悩まないでください。

ご不安な状況だからこそ、法的な専門家による冷静な分析と、的確なサポートが不可欠です。

私たちは、あなたの不安に寄り添い、お話を丁寧にお伺いすることから始めます。

今後どうすべきか、あなたにとって最善の道は何かを、一緒に探します。

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